通信制高校における学校評価の方法

全国にある高等学校では、独自の教育に対する取り組みの成果を自己評価する、学校評価が行われています。通信制高校においてこの学校評価を開示することは、入学して勉強したい受験者にとって、その通信制高校を評価するための判断材料となります。

ここでは、学校評価の具体的な内容を、とある通信高校の事例をもとにしながら、説明していきます。

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学校教育法によって学校評価は義務付けられている

2008年6月の学校教育法改正により、全国の高等学校において学校評価を実施し、なおかつその結果を公表するように定められました。これまで高等学校が定めてきた教育目標は、抽象的理念に基づいて設定されていることが多く、短時間でその成果を評価することは不可能だとされてきました。

従って、教育目標に基づいた活動自体を点検及び評価することは、教員などの学校関係者が最も不得意とする分野とされていたのです。しかし、学校評価を義務化することにより、教育目標に対して具体的成果を提示することで、その学校が定めている教育目標を第三者にわかりやすく説明することを狙いとしています。

通信制高校の仕組み

全国に設置されている高等学校としては、昼間に通う全日制の他、社会人を対象として夜間に通う定時制が広く知られています。この他、何らかの理由で学校に通学できない人がスクーリングなどの通信教育をメインとして学習することにより、高等学校卒業の資格を手にできる通信制を設けている高等学校も存在します。

通信制高校の仕組みは、全日制や定時制とは異なる点が多く、教師や生徒と出会う機会が月に数回設けられているスクーリングに限られている点が特徴となっています。全日制や定時制との大きな違いとしては、進級により卒業要件に大きく影響する学年制ではなく、科目ごとにレポートを提出して合否を判定する単位制を採用しているところです。

また、体育などレポート提出で補えない科目は、原則としてスクーリングを実施することで単位を得ることができます。卒業にかかる年数は最低3年ですが、自学自習のため、実際にはそれ以上の卒業年数がかかる人もいます。

全日制や定時制とは異なる学習形態であることもあり、高校での勉強状況を把握するためには、通信制高校特有の学校評価を参考にすることが不可欠と言えます。

通信制高校の授業内容における学校評価

通信制の学校評価で重要視される項目として、授業内容が充実しているかどうかがあります。原則としてレポート提出による自学自習がメインとなる通信制高校の場合、単位取得に繋げられる授業を行っているかどうかが鍵となります。

大きく分けて、ネットを活用した授業内容及び、スクーリングでの授業内容を充実させるかの2項目があります。これらの項目は、通信制高校での学校生活を行う上で、特に生徒や保護者が重視している部分と一致しており、学校側としては比較的力を入れやすい分野にもなっています。

ネットを活用する場合、メインとなる授業内容をライブ配信できているか、または授業以外の場でも活用できているかどうかが学校評価の対象となります。具体的には、ネット授業の利用者の人数及び、保護者面談やホームルームなどでも活用しているという実績を記載し、ネット活用の場を広げるといった課題も学校評価として提示されています。

スクーリングの場合は、その内容が充実しているかどうかを詳しく説明するとともに、生徒がスクーリングに対してどう思っているのかなどが、学校評価の対象です。具体的にはスクーリングの前後での生徒の変化を記載し、スクーリングに対する不安も、課題として提示されます。

この他、通信制高校ではあまり重要視されにくい、道徳教育や各種検定指導なども学校評価の対象とする場合があります。道徳教育に関しては、生徒のモチベーションを高めるための授業を取り入れているかどうかが重要となり、その授業の成果についても具体的に記載されています。

資格取得については、主要となる検定及びその取得状況を数値化し、資格取得に関する課題が細かく書かれていることが特徴となります。

通信制高校の生徒指導における学校評価

通信制高校の場合、生徒や教師と接する機会がスクーリングなど学校生活の一部に限られていることもあり、生徒指導はそれほど重要視されにくい部分です。

しかし、学校に通わせる保護者にとっては重要となる項目の一つであることから、学校評価の中でも力を入れざるを得ない分野となっています。主に生徒に対する指導分野が多く記載されていますが、スクーリングの安全管理や保護者への情報提供といった項目が含まれるケースも存在します。

生徒への指導については、校内におけるいじめの有無やその対策の他に、ソーシャルネットワークサービスを使った指導についても学校評価の対象としています。

いじめに対する基本的な原則を記載し、いじめに対する継続的な指導を行うなどの具体的な内容や、その課題についても羅列して記載されることが一般的です。ソーシャルネットワークサービスについては、業者と連携して不適切な書き込みが見つかった場合、即座に対応するといった具体的な方針が記載されています。

また、ネットでのいじめや不適切な書き込みに対して毅然とした態度で対応するなどの項目も学校評価として掲載されます。スクーリングの安全管理については、スクーリング実施中に起きた事故の有無や、宿泊時の対応などが学校評価の対象となっています。

また、清掃などの環境整備に関する内容の他、災害対応なども学校評価として記載されます。保護者への情報提供については、ホームページでの更新状況や、生徒の家庭に対して配布される印刷物の提供状況が記載されています。

情報提供に対する保護者の反応を報告する他、継続的に実施するかどうかも学校評価の一つとして提供されます。

通信制高校のキャリア教育における学校評価

通信制高校には、現役の高校生の他に、社会人など様々な経歴を持つ人がともに勉強する場としての性格を持っています。そのため、全日制と比較すると進学や就職支援といったキャリア教育の面には力を入れにくい傾向があります。

ただし、生徒の幅広いニーズに応えたいという雰囲気は年々強くなってきており、そういった分野に力を入れている通信制高校も増えてきています。結果として、この分野においての学校評価が良いかどうかで、生徒や保護者にとって通信制高校に入るかどうかを左右することにもなります。

キャリア教育における学校評価の基準は、進学や就職に対する指導の充実度合いとなっています。進学の場合なら大学受験に対する授業内容が充実しているかどうか、就職なら礼儀作法やマナーなどをきちんと指導しているかです。

大学への進学率や企業への就職率といった目に見える結果を記載しつつも、上位大学への合格率を高めることや正規雇用での採用を増やすなどといった課題を提示することも、学校評価の一つとなっています。